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榻(しじ)のはしがき [味村ノート]

小町M.jpg 小野小町をめぐる伝説は,ずいぶんとある
しかし,主流は2つで,恋愛譚と栄華の果ての零落を語るものとだ.後者のひとつに,謡曲「卒都婆小町」(そとばこまち)がある.四番目物,つまり謡曲を「神・男・女・狂・鬼」と分けて,その四番目「狂」に当る.

 卒都婆に女の老乞食(シテ)が腰掛けている.高野山の僧(ワキ)が通りかかり,これを見て教化(きょうげ)しようとする.だが,仏法問答でかえって負けてしまう.僧が名を問うと「小野の小町がなれる果てにてさむらふ」と乞食は答える.いまの乞食生活を語るうちに,若い頃にこがれ死にさせた深草少将の怨念が小町にとりつき,物狂いとなり,少将百夜通いの様を演じる.

 「人目忍ぶ通路(かよいじ)の 月にも行く閻にも行く 雨の夜も風の夜も 木の葉の時雨雪探し 軒の玉水 とくとくと 行きては帰り 帰りては行き 一夜二夜三夜四夜 七夜八夜九夜 豊(十夜)の明の節会にも 逢はでぞ通ふ鶏の 時をも変へず暁の 榻(しじ)のはしがき百夜までと通ひ往(い)て 九十九夜になりたり あら苦し目まひや 胸苦しやと悲しみて 一夜を待たで死したりし」 やがて,小町は正気に戻るが,少将を死なせたことを悔いて「花を仏に手向けつつ 悟りの道に入らうよ悟の道に入らうよ」となる.

牛車600.jpg あらすじは,こんな具合だが,深草少将は百度通うために,車の榻に印をつけて,その度数を数えたというわけだ.榻とは,牛車の牛をはずしたとき,轅(ながえ)の軛(くびき),つまり牛の後頸につける横木を支える台で,乗り降りの踏み台にも使ったものだ.さしずめ,いまならクルマのエンジンカバーにマジックで「正」の字を書くといったところだろうか.これが,百にあとひとつであの世だから.浮かばれぬのも無理はない.
図はクリックで別枠拡大

 せんさく好きは世の習いだ
「一夜二夜・…・・九夜十夜」というが,五夜,六夜はなぜ休んだのか(一書には,四夜と七夜との間に「五六はあらで」とある),またこれだけで九十九夜とは勘定が合わぬというわけだ.そこまで目くじらを立てて,人の恋路を邪魔することもなかろうが,そこは遊びの精神で,榻のはしがきを勘定する連中もいるから,おもしろい.
  ◇ 「方円秘見集」(1667年)で多賀谷経貞は,
   5,6を抜いて1から10までの数字を並べ,
    1+2+3+4+7+8×9+10=99
   とする.
  ◇ 「求笑算法」で田中由真は,まず,
    1×7+2×8+3×9+4×10=90
   として,重ねことばの四(よよ),七(なな),九(ここ)を加え,5,6を引いて,
    90+4+7+9-5-6=99
   とする.
  ◇ 「勘者御伽双紙」(1743年)にも中根彦循(法舳)が同じものを書いている.
   1と10,2と9というように相対する数の横を加え,5,6を引いて,
    1×10+2×9+3×8+4×7+5×6-5-6=99
   としている.
      (高木茂男編:ミステリー・ナンバー,遊びの百科全書9)


 小町算から100作りへ
これにならい,1~9(ときには1~10,0~9,また逆順)の順序を崩さずに,間に+-×÷などを入れて,ある一定の教にすることを「小町算」といっている.

 1917年,H.E.デュードニーが「1,2,……9 の数字の間に加減乗除の記号を入れて100にせよ」という問題を出した.数字パズルで「100作り」というが,つまりは「小町算」のことだ.デュードニーの問題は,コンピュータで全解が算出されている.
  ◇ +-だけを使った解
    1+2+3-4+5+6+78+9=100  などは
   1963年に計算され,22通りある.
  ◇+-×÷を使った解
    1+234×5÷6-7-89=100  などは
   1971年,R.L.パットンにより計算され,384通りある.

 似た問題に,順序は問わず,1~9を1回ずつ使って等式を作るものがある.
  ◇ ○○○+○○○=○○○ では基本形は42通り
    和の最大のものは  324+657=981
    和の最小のものは  173+286=459 だ.
   また,
  ◇ ○×○○○○=○○○○  ○○×○○○=○○○○ では9通りで,
    積の最大のものは 4×1963=7852
    積の最小のものは 28×157=4396 だ.
      (池野信一他:数理パズル)

 デュードニーは,Amusements in Mathematics(1917)のNo.81の問題として「○○○×○○=○○×○○でその積が最大のものを見つけること」を出している(M.ガードナー著,赤摂也・冬子訳:数学ゲームⅡ,別冊サイエンス).筆者が手元のマイコソで算出してみると,11通りあり,最大のものは532×14=76×98=7448だった.因みに,最小のものは158×23=46×79=3634で,全解の所要時間は30分足らずだった.

 榻のはしがきもコンピュータで勘定しては,味もそっけもなくなる.だが,小町,少将のご両人,そこは物わかりよく「ヨロシインジャナイデスカ」といってくれるかも.

[目]

今回の味村ノートは数遊び。日没も大分早まり幾分涼しさも出てきた夜長に、数学ゲームに興じるのも和歌に親しむのもご随意に・・・。
ところで、小野小町の生誕地は秋田県湯沢市か、熊本市か、福島県小野町か、はたまた隣町の厚木市小野か、いろいろと説があるようです。美人ということで、秋田が優勢だそうですが、才媛であり美人という面では、宮崎美子、斎藤慶子を輩出した熊本も有力です。いやいや、我が義姉は厚木市小野の出身、才色兼備をいうならば、小野小町の生誕地は厚木市小野説を採る。・・我が家では・・・。


[いす]
〇 牛車の説明図は[WIKIMEDIA COMMONS]より使わせていただきました
   http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gissya.png?uselang=ja
〇 小野小町の画像は[WIKIMEDIA COMMONS]より使わせていただきました
   http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ono_no_Komachi.jpg?uselang=ja
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