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育てるか育つか [味村ノート]

君子三楽_縦M.jpg
 教育という言葉は,日本では江戸時代から使われたという.
出所は孟子で,その第13巻尽心章句上の「君子の三楽」に第3の楽しみとして出ている.「得天下英才而教育之,三楽也(天下の英才を得てこれを教育するは,三の楽なり)」である.因みに,君子の楽しみの第1は父母が存命し兄弟が息災で暮すこと,第2は天にも人にも恥じる行為のないことで,天下の王となるなんぞはあずかり知らぬことだと強調している,


 こんな投書が先日の朝日新聞にあった(52年5月12日の「声」欄).
ある母親グループに「教育」という2字に,それぞれ送りがなをつけてもらったら,10人が10人「教え,育てる」とした.投書をされた方は「教え,育つ」と読むべきだとして,つぎのように主張する.
 これは言葉の遊戯などと笑ってすませることではない.「育てる」と「育つ」は厳然と区別すべき言葉だ.この根本的,天地のちがいある言葉をまったく混同しているところに現代教育の根本的誤りがあることを指摘したい.「教え,育てる」は操作主義的だ.人間が人間を操作する.これが誤りだったことを,日本人は戦後30年で忘却してしまったのか.「教師,親が教え,子どもは育つ」と読むべきだと固く信じている.

教育80.jpg 辞書を引くと「おしえそだつること」とあるから,
「教え,育てる」でもまちがいとはいえない.しかし,「誘いて善徳にすすますること」,「教えて知識を啓発せしめること」ともある.また,英語の[edu-cation]は,ドイツ語やフランス語と同じく,ラテン語の[educatio]から由来し,引き出すという意味だ.文法的な約束事はどうだろうと,本来の意味からは投書の方のいうとおりだと筆者は思う.

 教育を受ける側から見れば
「教え,育てる」は教えてもらって育ててもらうことだ.つまり,すべて人まかせ,他力本願だ.だから,子供の成績が悪いと先生のせいにする.自分に都合の悪いことは,家庭だ,社会だと他人のせいにする.そのくせ都合の良いことは自分のせいだと思うから妙なものだ.
 「教え,育つ」は,教えてはもらうが,それを元手に自分で育つことだ.出来,不出来は自分の責任だ.まちがっても先生に文句をいえたものではない.つまり,万物は自ら育つもので,それにきっかけを与え,それを引き出すために手を貸すのが教育というわけだ.

 企業内教育でも同じことだ.
「教え,育てる」式は依頼心ばかり強くする.上司から出張を命じられて「ママに相談します」という甘ったれを育てることになる.仕事でベマをやる,出来が悪いと,自分の努力不足をタナに上げて,教育が悪いからだとウソブクことになる.どう売ればよいか教育してくれなければ売りに行けない,などとモットモラシクいうセールスマンも同じたぐいだ.

教育2_80.jpg 投書の方は教師だそうだ.教育する側から謙虚にいう.「教師が子供をよい人間にする」だなんて思い上がりもはなはだしい.むしろ「子供は教範よりよっぽど良い人間である」といいたい.ルソーもエミールの中でいっている.「教育とは若木に水をやるようなもの」と.この精神に比して,現代教育は,角をためて,牛を殺すの類以外の何ものでもないめではないか.

 ひとつ教えては一歩下って,自らの力で育つ姿をじっ一と見守る.そこには教える側と教えられる側の強烈な信頼がある.それが教育だと思う.

[目]

今回の[味村ノート]、文中に52年(1979)とありますから、35年前の原稿です。大学入試センターが発足した年ですが、入試も教育もこの35年にいろいろと変遷はありましたが、残念ながら進歩があったとは思えません。しかしながら、[育つ]ことをサポートして下さる教師は昔からおられました。むしろ昔の方がおられたのかも知れません。

そんな古き恩師の中に、漢文を目にすると思い起こす先生がお二方おられます。1人は高校時代の古典の先生、あだ名も人柄もユニークな先生でした。県立ですがほぼ主(ヌシ)のような先生で、この先生のお陰で、修学旅行の前は、奈良京都に関わる古典を始めとした授業がびっしり組まれていたように記憶しています。世を斜に見ていた高校時代、入学時の担任として卒業以降もアドバイスをして下さった先生です。

もうお一方は、中学の国語の先生で1年と3年の担任でもあります。3年の担任は、「他の先生が誰も引きとらないから、オレが引き取った」そうですが、まさにご苦労をお掛けしました。私たちの学年の卒業と一緒に、高校に赴任されましたが、その後も何かとご面倒をお掛けしたように思います。

このお二方の先生を始め、小中高時代、私が[育つ]ことをサポートして下さった先生が5人おられます。その先生方の[教育]が、現在の私の考え方、自己規範、論理性など、さまざまなベースに多大な影響を及ぼしていると思います。今更ながら 深謝そして深謝です。
さて、蛇足の蛇足・・・。

   君子に三楽有り、而(しか)して天下に王たるは、与(あずか)り存(そん)せず。
   父母倶(とも)に存し、兄弟(けいてい)故無(ことな)きは、一楽なり。
   仰(あお)いで天に愧(は)ぢず、俯(ふ)して人に怍(は)ぢざるは、二楽なり。
   天下の英才を得て、これを教育するは、三楽なり。
   君子に三楽有り、而して天下に王たるは、与り存せず。

[いす]
〇 [味村ノート]については→こちら 
〇 イラストは下記URLよりフリーイラストを使わせていただきました。
   http://pictogram-free.com
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makimaki

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by makimaki (2014-02-20 07:05) 

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